なにこれ、下手くそ、なに?この漫画、自己マンじゃん、どこが面白いの?才能ないねキミ・・・左手で描いたの?
などと痛烈に率直にあなたに言ってくれる人はまずいないと思います。
「言われなくても自分のことは知ってるよ」という人もいるかも知れませんが、知ってるのと面と向かって言われるのとではインパクトが違います。
何が言いたいのかというと、とにかく自分をどん底へ突き落としてくれる編集やライバル、または周囲の人達がいないと人は頑張ろうとしないってことです。
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漫画家になりたい?じゃあまずは挫折してみようか・・・
今の時代ってもの凄く周囲に対して神経使っている時代で、「こんな事言ったら嫌われるかも知れない・・・」と繊細な人達で溢れかえっています。
当たり障りのないソフトで柔軟で優しい人達が多いです。
言い方を変えれば希薄と言うか冷めてると言うか・・・。ってことかもしれません。
叱ってもらえたらありがたいんだぜ
私が師事していた先生は凄く大人な人で、怒るって事がない方でした。
柔らかく気を遣いながら「ここはこうしてね」とか優しくリテイクを言っておられましたw
職場での態度は奥さんの次に私が大きかったと思います(笑)
なので叱られるということはありませんでした。
しかしそんな私でもアシスタントに入りたての新人の頃は、借りてきた子猫の様に大人しく小さくなっておどおどしながら仕事をしてました。
レベルが違う世界
アシスタントをする前は自分は絵は得意で自信がありました。
ところがいざプロの職場で仕事を始めると、自分の絵がまるで小学生が描いた様なくらいのレベルに見えたのです。
その理由は、私より年下のアシさんが1年ほど先に入っていて凄く上手かったんですね。
Iさんとしておきましょう。
このIさんは私より歳が5個くらい下だったと思います、当時は20歳くらいだったかな?なので私は25か26歳くらいでした。
彼の描いた背景をまじまじと見て”俺には無理かも・・・“と自信をなくしました。
人生初の背景(小物)で完全に自信喪失
そして先生から・・・初仕事を指示されます。
先生「じゃあ、麻雀牌を1個試しに描いてみて」
俺「あ、はい!」
しかしコレが単純そうで中々のくせものでした、ただの四角い箱を描きゃあいいんだろと高をくくっていたのですが・・・
そう、描けないんです・・・なぜか!
冷や汗が湧き出てきました、きっと緊張してるからだと言いくるめ何度もデッサンを取ります。
俺「な、なぜ描けないんだろう・・・」
デッサンを取り始め、1時間が経ち・・・
2時間が経ち・・・
先生からやっとペン入れを許されたのが、3時間経って描けたデッサンの下絵でした。
トータル4時間かけて麻雀牌1個をやっと描いたのです。
もう精神的にも肉体的にもヘトヘトでした。
そこへ大人しい先生のきつい一言が・・・
「・・・絵描いたことあるの?」
俺「・・・・・・・・・・・」ズーーーーーーン・・・||li _| ̄|○ il||
その週はほとんど役に立てずメシだけ喰って帰る形になり自分が本当に情けなくなりました。
半べそ状態と悔しさと情けなさと色んな感情がぐちゃぐちゃになり、自信喪失になりました。
田舎にいた頃○○君絵上手いね~などと学校の女子なんかにちやほやされたことが、とてつもなく恥ずかしい想い出と変化しと同時に「I君を追い越してみせる」という情熱の様な物も湧いてきました。
死ぬ思いで描きまくる
当時アシスタントの仕事時間は週5日~6日の住み込みで、朝11時頃から翌日の朝の3時くらいまでの14時間~15時間描きまくりです。
完全なブラックな世界ですが漫画の世界ではそれが当たり前でした。
同僚のライバルを3ヶ月で抜く
それから自宅でも描きまくり、Iくんと同じ量をこなせるくらいまで上達しました。
(自分で言うのも何ですがw)
というのも麻雀牌描きすぎて、先生が麻雀牌の背景振るのはIくんじゃなく俺ばかりになってきたんですねw
上手くなって当たり前なんです^^;
あ、でももちろん他の家とか車とか街とか自然物とか、地球を数周するくらい線は描いたんじゃないでしょうか(笑)
やはり基本は大事
この麻雀牌を描くというのは実はテーブルに乱雑に広げたトランプを描く様な、デッサンの練習になっていたんです。
この麻雀牌を描いてなければ今の自分はなかったかも知れません。
さて、テーブルのトランプカードや麻雀牌のデッサンは良い練習になります、がどうしてもデッサン苦手・・・またパース取るのが苦手という人もいるでしょう。
その壁が越えられず、足踏み状態なんだという人はデジタルの力を借りちゃいましょう。
デジタルでパースを取る
私は漫画を描くときはコミスタEX、クリスタEX、Photoshop、メディバンペイントPROなどを使い回しています。
で、これらのソフトでパースを非常に取りやすく感心したのは、メディバンペイントです。
無料でもメディバンペイントのパース定規はめちゃくちゃ使い勝手が良く、遠くの消失点を直感でサッと手軽に取れるので作業がスピーディーになります。
とは言えある程度の基本のデッサン力は絶対に必用です、デッサン力はパース力に繋がります。
そしてパース力はアイレベルをしっかり理解し、体で覚えていなければ上達はなかなか厳しいものになります。
つまりソフトのツールや背景ブラシや3D素材があるから漫画の背景は大丈夫・・・と思ってたらそれは甘い考えになります。
アイレベルをマスターしていないとそもそもどこに消失点を置けばよいかすら分かりません。
実はうちに来ていたアシスタントくんがそうでした。
なので素材や背景の”アタリ”を私が軽く指示して、作業をしてもらっていました。
このアイレベルやパース力などを上げる方法を動画でも配信しているので一度は見ておいてください。
まとめ
最後はパースの話しになってしまいずれちゃいましたが、パースが取れる様になりどんな背景もこなせる様になった理由は悔しさと情けなさがあったからこそという話でした。
それも、どん底へ突き落とされるくらいの重さが、その後のバネとしてジャンプするエネルギーに比例すると思って間違いないです。
辛酸なめまくって、どん底を這いずり回り、あがいてもがいて苦しんで苦しみ抜いてください。
心が折れず、諦めなければきっと光は見えてきます。
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